こんにちは、のんびりおじさんです。
「もし入院することになったら、医療費はいったいいくらかかるんだろう…」――そんな不安な気持ちを、50代を過ぎたあたりからふと感じ始めたりしていませんか?
実は私も、最近のニュースで「高額療養費制度の見直し」という言葉を何度も耳にして、急に気になりはじめました。調べてみると、2026年8月と2027年8月の2段階で大きな改正が行われる予定なんですね。
今回は、シニア世代だからこそ知っておいてほしい「高額療養費制度」の基本と、これからの改正で何が変わるのかを、できるだけやさしい言葉で整理してみました。
この記事でわかること
- 高額療養費制度とはどんな仕組みか
- 今の自己負担限度額はいくらなのか(早見表つき)
- 2026年8月・2027年8月の改正で何が、いくら変わるのか
- 払い戻しを受けるための申請方法(マイナ保険証の活用法も)
- シニア世代が今からできる備え
目次
高額療養費制度ってどんな制度?
まずは制度のおさらいからいきましょう。「制度の名前は聞いたことがあるけど、よくわからない」という方も多いと思います。
ひと月の医療費の自己負担に「上限」がある仕組み
高額療養費制度とは、簡単に言うと 「ひと月(1日〜末日)の医療費の自己負担が、ある金額を超えたら、超えた分はあとで戻ってくる」 という仕組みです。
たとえば、入院や手術で医療費が100万円かかったとしても、健康保険の3割負担で30万円も払うわけではありません。一定の上限額(自己負担限度額)を超えた分は、加入している健康保険から払い戻されるのです。
厚生労働省のページにもこう書かれています。
70歳未満・年収約370万円~約770万円の方であれば、医療費100万円の治療を受けた場合、自己負担は約8.7万円まで抑えられます。
(出典: 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」)
100万円のうち、最終的な自己負担は約8.7万円。これが高額療養費制度の大きな安心ポイントです。
年齢と所得で上限額が決まる
自己負担の上限額は、「年齢(70歳未満/70歳以上)」と「所得(年収)」の組み合わせで決まります。
- 収入が多い方ほど、上限額も高めに設定されている
- 逆に、住民税非課税の世帯など低所得の方は、上限額が低く抑えられている
これは「支払い能力に応じて負担をお願いする」という考え方で、専門用語では「応能負担(おうのうふたん)」と呼ばれます。「払える人にはちゃんと払ってもらう、払うのが厳しい人には負担を軽くする」というイメージですね。
知っておくと得する「世帯合算」と「多数回該当」
制度には、覚えておくと役に立つ2つの「お得な仕組み」があります。
● 世帯合算
同じ世帯で同じ健康保険に入っている家族の医療費は、ひと月分を合計して計算できます。たとえば、ご夫婦そろって通院・入院があったような月は、合算することで上限額を超えやすくなり、払い戻しを受けやすくなります。
● 多数回該当(たすうかいがいとう)
直近12か月の間に、高額療養費の対象になった月が3か月以上ある場合、4か月目以降は上限額がさらに下がります。長期治療が必要な方への配慮です(出典: 厚生労働省)。
自己負担限度額はいくら?(現行の早見表)
では、現行制度(〜2026年7月)の70歳未満の方の上限額を見てみましょう。
| 区分 | 年収のめやす | 月あたりの上限額 | 多数回該当(4回目以降) |
|---|---|---|---|
| ア | 約1,160万円〜 | 252,600円+(医療費−842,000円)×1% | 140,100円 |
| イ | 約770〜1,160万円 | 167,400円+(医療費−558,000円)×1% | 93,000円 |
| ウ | 約370〜770万円 | 80,100円+(医療費−267,000円)×1% | 44,400円 |
| エ | 約156〜約370万円 | 57,600円 | 44,400円 |
| オ | 住民税非課税 | 35,400円 | 24,600円 |
具体例で考えてみましょう
たとえば、年収500万円の方(区分ウ)が、ひと月に100万円の医療費がかかったとします。
- 窓口での3割負担:30万円
- 自己負担限度額:80,100円+(1,000,000円−267,000円)×1% = 約87,430円
- あとから戻ってくる金額:30万円 − 約8.7万円 = 約21.3万円
100万円の医療費が、最終的な手出しは約8.7万円で済む。これは知っておくと、入院通知書を見たときの心の余裕がまるで違います。
【ここが本題】2026年8月の改正 ― 第1段階で何が変わる?
では、いよいよ制度改正の話です。もともと2025年8月から実施される予定でしたが、患者団体などからの強い反対を受けて一度凍結。あらためて2026年8月と2027年8月の2段階で実施されることになりました。
① 月の上限額が全区分でアップ
2026年8月からは、所得区分は今までどおりの5区分のままで、月の上限額が全区分で4〜7%ほど引き上げられます。
| 区分 | 年収のめやす | 現行 | 2026年8月〜 | 増加額 |
|---|---|---|---|---|
| ア | 約1,160万円〜 | 252,600円+1% | 270,300円+1% | +17,700円 |
| イ | 約770〜1,160万円 | 167,400円+1% | 179,100円+1% | +11,700円 |
| ウ | 約370〜770万円 | 80,100円+1% | 85,800円+1% | +5,700円 |
| エ | 約156〜約370万円 | 57,600円 | 61,500円 | +3,900円 |
| オ | 住民税非課税 | 35,400円 | 36,900円 | +1,500円 |
※出典: 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」(令和7年12月25日 第209回社会保障審議会医療保険部会)
多くの方が当てはまる区分ウ(年収約370〜770万円)の場合、月の上限が約5,700円アップ。たとえば現行での負担額が約87,000円だった場合、約93,000円に上がるイメージです。
② 新登場の「年間上限」とは
2026年8月からの大きなポイントは、新しく「年間上限」が導入されることです。
これは、長く治療が続く方(がん治療や難病で何か月も通院・入院が必要な方など)が、毎月毎月、限度額いっぱいまで負担し続けるのは大変だよね…という配慮から生まれた仕組みです。
- 1年間の自己負担の合計額に、新たに上限を設ける
- その金額を超えた分は、それ以上の窓口負担を求めない
- たとえば一般所得層(年収約370〜770万円)の年間上限のめやすは 53万円 という案が示されています
毎月の限度額がアップする一方で、長期療養者には「年単位で頭打ち」が設けられる。負担増と配慮がセットになった改正、と理解しておくと整理しやすいですね。
2027年8月の改正 ― 第2段階で何が変わる?
続いて、2027年8月からの第2段階です。ここでは 所得区分そのものが細かく分けられます。
① 所得区分が「より細かく」分かれる
現行は5区分(ア〜オ)ですが、2027年8月からは住民税非課税世帯を除いて、所得に応じて細かく区分化される予定です。
とくに、現行の「区分ウ(年収約370〜770万円)」のように幅の広かった区分は、3つに分かれます。具体的には、こんなイメージです。
| 年収のめやす | 2027年8月〜の月額上限(案) |
|---|---|
| 約370万〜510万円 | 据え置き(85,800円+1% ※第1段階の額) |
| 約510万〜650万円 | 98,100円+1% |
| 約650万〜770万円 | 110,400円+1% |
※出典: 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」 / 一部報道(日本経済新聞・時事通信ほか)
同じ「年収500万円台」のなかでも、より収入の多い方は上限が引き上げられるかたちになり、中・高所得層ほど負担が増える設計になっています。
② 低所得世帯にはセーフティネットの強化
負担増だけではなく、配慮の仕組みも盛り込まれています。とくに、「年収200万円未満の課税世帯」の多数回該当(4か月目以降の上限額)は引き下げられる予定です。
長く治療が続く低所得世帯の方ほど、家計への影響が和らぐようになっています。
※ご注意:2027年8月の細分化の正式な数値や対象は、今後の国会審議などで一部変更される可能性があります。最新の確定情報は、必ず厚生労働省の公式ページでご確認ください。
申請の流れ ― 払い戻しを受けるには?
制度を「知っている」だけでは戻ってきません。きちんと申請してはじめて、お金が戻ります。
方法①:あとから申請して払い戻しを受ける
いちばん基本的なやり方です。
- 病院でいったん上限を超えた金額を支払う
- 加入している健康保険(健康保険組合・協会けんぽ・市区町村の国保・後期高齢者医療広域連合など)に申請
- 2〜3か月後に、超過分が口座に振り込まれる
申請には2年間の時効があるので、「あ、そういえばあのときの入院…」と思い出した方も、まだ間に合うかもしれません。
方法②:先に「限度額適用認定証」をもらっておく
入院や高額な治療が事前にわかっている場合は、「限度額適用認定証(げんどがくてきよう にんていしょう)」を保険者に申請しておきましょう。
これを病院の窓口に出せば、最初から上限額までの支払いで済みます。立て替える必要がなく、心理的にもラクですね。
方法③:マイナ保険証なら認定証なしでOK
近年、もっとも便利になった方法がこれです。
マイナ保険証(マイナンバーカードを保険証として利用)を持って病院に行けば、限度額適用認定証を準備しなくても、自動で上限までの支払いになります。
※ただし、医療機関や薬局が「オンライン資格確認」に対応していることが前提です。現在は全国のほとんどの医療機関・薬局が対応済みですが、念のため受診前にご確認いただくと安心です。
厚生労働省も、マイナ保険証の活用を推奨しています(出典: 厚生労働省)。手続きが面倒という方こそ、マイナ保険証はおすすめです。
シニア世代が今からできる「3つの備え」
改正の話を聞くと「結局、負担は増えるのか…」と少し気持ちが沈むかもしれません。でも、知識があれば、できる備えはあります。
① 「医療費の予備費」を意識する
高額療養費があるとはいえ、月の上限額(数万円〜十数万円)は自己負担になります。さらに、差額ベッド代や食事代は対象外。50万円〜100万円ほどの「医療費予備費」を別口座にプールしておくと安心です。
② マイナ保険証の利用登録をしておく
いざ入院!というときに慌てないために、元気な今のうちに マイナンバーカードを保険証として利用登録 しておきましょう。手続きはマイナポータルや病院の窓口、薬局の専用端末からできます。
③ 自分の加入保険を把握しておく
意外と忘れがちですが、「自分はどこの健康保険に入っていて、どこに申請すればいいのか」を一度確認しておくと、いざというとき家族も助かります。
- 会社員:勤務先の健康保険組合 or 協会けんぽ
- 自営業・退職後の方など:お住まいの市区町村(国民健康保険)
- 75歳以上:後期高齢者医療広域連合
まとめ ― 知っているだけで安心の制度です
最後に、ポイントをまとめます。
- 高額療養費制度は、ひと月の医療費の自己負担に「上限」を設ける仕組み
- 2026年8月から、月の上限額が全区分で4〜7%アップ。同時に「年間上限」が新設
- 2027年8月から、所得区分が細かく分かれ、中・高所得層を中心に負担増
- 低所得世帯の多数回該当は逆に引き下げ。配慮の仕組みも入っている
- マイナ保険証があれば、認定証なしで上限までの支払いに自動的になる
制度は少し複雑ですが、「知っているか・知らないか」だけで、いざという時の安心感がまるで違います。今回の改正をきっかけに、ご家族とも一度、話し合ってみてはいかがでしょうか。
私も、わが家の「医療費の予備費」を少し見直そうかなと思っているところです。
参考・出典
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 厚生労働省保険局「高額療養費制度の見直しについて」(令和7年12月25日 第209回社会保障審議会医療保険部会 第9回高額療養費制度の在り方に関する専門委員会)(PDF)
- 全世代型社会保障構築会議 資料5「高額療養費制度の見直しについて」(PDF)
※本記事は2026年5月時点の情報をもとに作成しています。最新情報は必ず厚生労働省の公式ページでご確認ください。