何気ない朝のひとときが、 実はとても贅沢な時間だったと気づいたのは、 少し立ち止まって静かな暮らしをするようになってからでした。
目の前のことに追われる日々の中では、 その静けさや穏やかさがどれほど大切だったのか、 なかなか気づけないものです。
丁寧な朝のルーティン
午前9時。
お気に入りのケトルでお湯をゆっくり沸かし、 寝ぼけた頭に静かな音楽を流しながら、 いつものようにコーヒーを淹れる。
部屋に漂う湯気の香りと、心地よい音楽。 窓の外の風の音が、自然のリズムを感じさせてくれます。
たったそれだけのことなのに、不思議と心が満たされて、 「今日もきっと大丈夫」と思える自分がいます。
使っているのは、近所のスーパーで手に入れたドリップ式のコーヒー。
高級な豆ではないけれど、部屋に広がる香りが心地よく、 無印良品の白いマグカップに注げば、 それだけで豊かな気持ちになります。
そのカップも、使い込むうちに手に馴染んで、 まるで日々のパートナーのような存在になりました。
流れるのはピアノとチェロのインストゥルメンタル。
言葉のない旋律が、静かに心に寄り添い、 余計な雑音をそっと遠ざけてくれる気がします。
窓から差し込むやわらかな光がテーブルを照らし、 朝の時間をそっと彩ってくれます。
風の音や鳥のさえずりをBGMに、 ゆっくりと一日が始まっていくのです。
カーテン越しに揺れる木漏れ日を見ているだけで、 なんとなく安心感が湧いてくる。
そんな感覚を味わえる朝は、まさに心の栄養時間です。
忙しかった日々との違い
かつては、朝食もそこそこに家を飛び出し、 満員電車に揺られながら、 ただ静かに目を閉じて時間が過ぎるのを待つ毎日でした。
ノートパソコンが入った重たいバッグを持ち、 スケジュール帳には隙間なく予定が並び、 とにかく「こなすこと」に必死でした。
会社に着くころには、すでに疲れを感じていたものです。
当時は、朝のひとときにコーヒーをゆっくり淹れるなんて考えられませんでした。
「のんびりしていたら置いていかれる」、そんな焦りが常に心のどこかにあったように思います。
でも今は違います。
静かな朝の時間こそが、自分を整えるための大切な時間であると、 ようやく気づいたのです。
慌ただしい暮らしを経てたどり着いたのは、 時間の質を大切にする生き方。
何かを削って得るのではなく、 自分にとって必要なものを見極めて取り入れる。
その選択を繰り返すことで、心は少しずつ整っていきます。
50代からの贅沢な暮らし方
「ゆっくり過ごす」とは、何もしないことではなく、 「ひとつひとつを丁寧に味わうこと」なのかもしれません。
コーヒーを一杯淹れるだけの数分間が、 こんなにも心を豊かにしてくれると知ったのは、 つい最近のこと。
テレビやスマートフォンを少し遠ざけて、 静かな時間に身をゆだねると、 見過ごしていた日常の美しさに気づけるようになります。
お金をかけず、時間をかけて、自分の暮らしを見つめ直す—— それが今の私にとっての“贅沢”です。
昔は「贅沢=高級」と考えていたけれど、 今は「贅沢=自分を大切にすること」だと感じています。
あなたの朝は、どんなふうに始まりますか?
たまには、少しだけ時間をとって、 ゆっくりとコーヒーを淹れてみませんか。
きっと、心がすっと整うのを感じられるはずです。
それは、50代だからこそ感じられる、 人生の深みなのかもしれません。